津地方裁判所四日市支部 平成元年(ワ)201号 判決 1990年4月09日
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告に対し、金一六八〇万二八三三円及びこの内金四五万九一九九円に対する昭和五五年三月一五日以降、内金一〇四一万四二四六円に対する昭和五五年六月二七日以降、内金五九二万九二三五円に対する昭和五六年二月二一日以降それぞれ支払ずみまで年一四・六パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1(一) 訴外株式会社本洲木工は訴外瀬戸信用金庫(以下「瀬戸信金」という。)からの金員借受けについて、次の約定で、原告に対し、昭和五三年二月一日に信用保証委託の申入をした。
原告が瀬戸信金に代位弁済したときは、代位弁済額に対し、その翌日から年一四・六パーセントの割合による損害金を原告に支払う。ただし、損害金の計算は年三六五日の日割計算とする。
(二) 被告は原告に対し、昭和五三年二月三日、株式会社本洲木工が原告に負担する右債務の支払いについて連帯保証をする旨約諾した。
(三) 原告は昭和五三年二月三日付で瀬戸信金に対し信用保証をなし、株式会社本洲木工は瀬戸信金から昭和五三年二月六日に金一五〇万円を利息年利八・二パーセントの約定で借受けた。
(四) しかるに株式会社本洲木工は金一〇五万円の返済をしたのみにて以後の返済をしないため、原告は瀬戸信金から元本残金四五万円及び未収利息について代位弁済の請求を受け、原告は昭和五五年三月六日に元利合計金四五万九一九九円を代位弁済した。
(五) その後、訴外細谷重信から金一三一六円の返済があったので、原告はこれを全額損害金に充当した。
2(一) 訴外株式会社本州は瀬戸信金からの金員借受けについて、次の約定で、原告に対し、昭和五四年三月一五日に信用保証委託の申入をした。
原告が瀬戸信金に代位弁済したときは、代位弁済額に対し、その翌日から年一四・六パーセントの割合による損害金を原告に支払う。ただし、損害金の計算は年三六五日の日割計算とする。
(二) 被告は原告に対し、昭和五四年三月一七日、株式会社本州が原告に負担する右債務の支払いについて連帯保証をする旨約諾した。
(三) 原告は昭和五四年三月一七日付で瀬戸信金に対し信用保証をなし、株式会社本州は瀬戸信金から昭和五四年三月二四日に金六〇〇万円を利息年利七・五パーセントの約定で借受けた。
(四) しかるに株式会社本州は金一八二九円の返済をしたのみにて以後の返済をしないため、原告は瀬戸信金から元本残金五九九万八一七一円及び未収利息について代位弁済の請求を受け、原告は昭和五五年六月二六日に元利合計金六〇二万八九三五円を代位弁済した。
(五) その後、株式会社本州から金六七万六〇六四円の返済があったので、原告はこのうち金九万九七〇〇円を元金に、金五七万六三六四円を損害金に、それぞれ充当した。
3(一) 株式会社本州は瀬戸信金からの金員借受けについて、次の約定で、原告に対し、昭和五四年四月二五日に信用保証委託の申入をした。
原告が瀬戸信金に代位弁済したときは、代位弁済額に対し、その翌日から年一四・六パーセントの割合による損害金を原告に支払う。ただし、損害金の計算は年三六五日の日割計算とする。
(二) 被告は原告に対し、昭和五四年四月二六日、株式会社本州が原告に負担する右債務の支払いについて連帯保証をする旨約諾した。
(三) 原告は昭和五四年四月二六日付で瀬戸信金に対し信用保証をなし、株式会社本州は瀬戸信金から昭和五四年五月八日に金一〇〇〇万円を利息年利七・五パーセントの約定で借受けた。
(四) しかるに株式会社本州は全く返済をしないため、原告は瀬戸信金から元本残金一〇〇〇万円及び未収利息について代位弁済の請求を受け、原告は昭和五五年六月二六日に元利合計金一〇四一万四二四六円を代位弁済した。
よって、原告は、被告に対し、各求償債務に対する各連帯保証契約に基づき、金一六八〇万二八三三円及びこの内金四五万九一九九円に対する昭和五五年三月一五日から、この内金一〇四一万四二四六円に対する昭和五五年六月二七日から、この内金五九二万九二三五円に対する昭和五六年二月二一日からそれぞれ支払ずみまで年一四・六パーセントの割合による約定の遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
請求原因1の(二)、2の(二)及び3の(二)の各事実は認め、その余は知らない。
三 抗弁
1 株式会社本洲木工及び株式会社本州はいずれも商人である。
2 原告が被告に対し、各連帯保証債務の履行を求めることができる日から五年以上が経過した。
3 被告は右消滅時効を援用する。
四 抗弁に対する認否
抗弁1及び2の各事実は認める。
五 再抗弁
株式会社本洲木工と株式会社本州はいずれも破産し、瀬戸信金は、昭和五五年一月一六日、株式会社本洲木工及び株式会社本州の各破産事件において、本件各貸金債権を破産債権として届出をし、これらは同月二四日に確定した。
六 再抗弁に対する認否
再抗弁事実は知らない。
仮に右事実が認められたとしても、本件各求償権の時効中断は生じない。
第三 証拠(省略)
理由
一 請求原因1の(二)、2の(二)、3の(二)の各事実及び抗弁1及び2の各事実は当事者間に争いがない。
いずれも成立に争いのない甲第二、第六、第八ないし第一〇、第一二ないし第一八号証、いずれも被告作成部分につき成立に争いがなく、成立に争いのない甲第四号証及び弁論の全趣旨によりその余の部分の成立の認められる甲第一、第三、第七、第一一号証、いずれも原本に代えて写しを提出することに異議がなく、原本の存在、成立に争いのない甲第一九、第二〇号証並びに弁論の全趣旨によれば、その余の請求原因事実及び再抗弁事実が認められる。なお、請求原因2の(五)の株式会社本州の返済は、弁論の全趣旨によれば、原告が法定代位により取得した瀬戸信金の株式会社本州に対する貸金債権についての配当であると認められる。
二 以上の事実のもとで判断する。
瀬戸信金の株式会社本洲木工に対する貸金債権と原告の株式会社本洲木工に対する求償権とは全く別個のものであり、また、瀬戸信金の株式会社本州に対する各貸金債権と原告の株式会社本州に対する各求償権とは全く別個のものである。
そうすると、原告が法定代位により本件各貸金債権を取得し、したがって、破産手続において瀬戸信金の地位を承継したものと扱われたとしても、これにより当然に本件各求償権の消滅時効が中断するものとは解しえない。
原告の株式会社本洲木工に対する求償権及び株式会社本州に対する各求償権は、いずれも原告と右各会社との間の各保証委託契約により発生したものであり、右各保証委託契約は右各会社の営業のためにするものと推定されるから、右各求償権はいわゆる商事債権として五年の短期消滅時効の適用を受けるものと解すべきである。
そして、被告は、本件各求償債務につき連帯保証をしたものであるから、右各債務の消滅時効を援用することができるところ、被告が消滅時効を援用していることは本件記録上明らかである。
三 よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。